日本の英語教育の問題点と塾の役割

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2024年06月10日

日本の英語教育の問題点と塾の役割

 

こんにちは、向陽塾です。

岡崎市の皆さんに、私たちの地域に根ざした学習支援をお届けしています。

今回は、日本の英語教育の現状と問題点、そして小中学生が英語力を高めるために塾が出来ることについてお話したいと思います。

1.英語教育の変遷

1-1.英語教育の始まり

中世から近世にかけて、ヨーロッパでおこった宗教改革もあり、大航海時代が始まります。
その結果、キリスト教布教のために宣教師が日本を訪れたり、徳川家康に仕えたウィリアム・アダムス(三浦按針)が日本にたどり着き、西洋のさまざまな知識を伝えることで日本初の英語教育がはじまったとされています。

その後、幕府による鎖国政策で断絶されてしまった日本での英語教育は、幕末から明治にかけて再び始まりました。
黒船来航によって開国した日本で、欧米文化を取り入れる文明開化が起こります。
そのような中、語学の必要性が高まり、英語の辞書や教科書がつくられ、積極的に英語教育が行われるようになりました。

この頃の英語教育はいわゆる英才教育の一環として中学校や一部の小学校で行われました。

しかしその後、太平洋戦争に突入することで社会情勢が変化し、英語は「敵性言語」とされ、英語教育は再び断絶されることになります。

 

 

1-2.現在に続く英語教育の始まり

第二次世界大戦が終了し、GHQの指導の下、英語教育再開が議論され、1951年より中学校で選択科目として英語教育が再開されます。

このとき、アメリカでの教育を模写することを前提に「詰め込み教育」が始まります。
50年にわたって選択科目での教育が続きましたが、2002年に中学校での必修化が行われ、現在に至ります。

2.日本の英語教育の課題

日本人の英語学力は低いといわれます。

国際語学教育機関「EFエデュケーション・ファースト」が、220万人が参加した歴代最多のデータ集計に基づき、2023年に発表した英語能力指数ランキングでは、日本人の英語力は113カ国・地域中、過去最低の87位という結果でした。

アジアでの順位も23カ国中15位と低く、韓国や中国に遅れをとっています。

何年も公教育で英語を学ぶのになぜでしょうか。

 

 

2-1.日本の英語教育の問題点

日本の英語教育の問題点として、以下があげられます。

1.本場を知る英語教師が少ない

日本の教育現場で英語を指導する教師の多くは、日本国内で生まれ、受験を経験し教師になっています。

帰国子女や長い留学経験により英語をネイティブな環境で使う経験が限られていたり、英語圏の文化や言語に精通した教師は少なく、どうしても自分が学んできた、和訳を前提としたジャパニーズ英語、カタカナ英語をもとに指導を行うため、子どもたちに英語本来の楽しさを伝えるのは難しい状況です。

教師の指導方法や言語能力の向上は、生徒の英語学習に大きな影響を与えるため、教育システム全体のあり方を変える必要性を感じます。

外国語指導助手(ALT)やタブレットの導入という、英語教育には欠かせない制度を取り入れておきながらうまく活用できていない現状もあります。

2.実践的な学習が足りない

日本では中学生から(現在は小学生から)英語を学び始め、高校、大学と約10年間も英語を学習するのがふつうです。

にもかかわらず、英語が出来ない、話せない人が多いのはご存知の通りで、外国人と英語で自然にコミュニケーションのとれる人は、ほとんどいません。

この理由として、日本の英語教育では受験やテストを重視する傾向があり、文法学習や単語・熟語の暗記などに時間が割かれ、英語を話す機会はほとんどないことがあげられます。

テストで問われる英語は実際の日常会話やビジネスシーンで用いられる英語と異なることが多く、学校で学んだ英語がそのまま実生活ではなかなか役に立ちません。

韓国では1997年から、小学3年生からの英語教育が義務化されています。コミュニケーションのための英語が重要視され、ディベートやプレゼンテーションなど実践的に英語を使う授業が行われています。

日本の英語教育も根本的な改革が必要と思われます。

 

 

2-2.英語入試における現状

近年、日本の高校および大学入試は大きな変革を迎えています。

1.大学入試

近年の大学入試は難化し、問題のクオリティーも変化することで、より実践的な力を求めるようになってきています。

保護者様世代が受験を迎えた時期である1989年の英語の共通一次試験当時(当時)では、100分の筆記試験で約2700語を読めばよかったのが、2023年の大学入学共通テストでは、80分のリーディングで約6000語となり、その処理スピードは約3倍になっています。

また、2025年から始まる新過程共通テストでは、英文の長文化だけでなく、資料を読み取り、論理的に主張をまとめたり、文章の校正・編集問題など、実際のコミュニケーションを想定した問題も出題されるとされています。

センター試験の英語の配点は筆記200点、リスニング50点で実施されてきましたが、共通テストになってからはリーディング100点、リスニング100点となり、リスニングの重要性が高まっています。

2次試験でもリスニングの重要性が高まっており、アメリカの公共ラジオが音源になるなど、そのクオリティーは上がっています。

2.大学入試(英語民間試験の活用)

2020年よりはじまった、大学入試における英語民間試験の活用は、コロナ禍を経て、顕著な伸びを見せています。

2024年2月、旺文社教育情報センターが公開した資料によれば、2024年度入試で英語の英語民間試験を利用した大学は全国で462校あり、全体の60%を超えました。

また、同じく旺文社教育情報センターが2023年に公開した資料によれば、2023年に一般入試で民間試験を利用した受験生の90%が英検を利用していたそうです。

英検は利用できる大学が多く、また実施回数や試験会場が多いのが原因と考えられます。

活用方法は各大学でさまざまですが、英検をはじめとした民間試験のスコアを所持していることは、大学入試で有利であるといえます。

 

 

3.高校入試

高校入試では、旧態依然としている地域が目立ちます。

ただ、大阪府など、高校入試で民間試験の活用が活発な地域もあります。例えば英検2級を持っていれば、学力試験で80%を取ったことになるなど、民間試験のスコアを学力試験の点数へと読みかえることが出来ます。

しかし、愛知県では民間試験の活用はごく一部の高校に限られています。英検のスコアが入試に加点されることはなく、2級以上レベルであれば、調査書への記載により考慮される程度と考えられます。

高校入試にも広く民間試験活用が広がることは、「入試当日一発勝負」という問題も解決し、生徒たちの英語力アップに大いに貢献することになると思われます。
また、そのように入試制度が変わることが、公教育を含め教育現場を大きく動かすことになり、英語力アップの最短の道ではないかと思われます。

 

 

2-3.就職における優位性

就職において、民間試験のスコアはどれほど優遇されるでしょうか。

外資系企業やグローバルに業務を展開している大企業、また、海外から日本に来る観光客や労働者、留学生を相手とする職種などでは、民間試験のスコアが重要視されます。

英検のホームページによれば、英検2級は「ビジネスシーンでも採用試験の履歴書などで英語力をアピールできます」とされ、英検1級なら「世界で活躍できる人材の英語力を証明します」とされています。

「英語活用実態調査」によれば、上場企業の70%以上が、採用時にTOEICのスコアを参考にすると答えています。求めるスコアは600点以上。

外資系企業やグローバル企業、旅行・航空業界、物流業界、金融業界ではTOEIC800点以上、英検準1級以上が求められます。また、スコアは昇進、昇格の用件にもなります。

ただ、これは入社段階で求められるものであり、実務に当たっては英語でのコミュニケーション能力が求められ、入社後も相応の努力が求められます。
現場では英語でコミュニケーションを取れる人材を求めますが、これに対応できる日本人は少なく、日本語も話せる外国人にその場を奪われているのも現実です。

3.小学生からの英語教育

3-1.言語習得のプロセス

言語習得のプロセスは、どんな言語であっても変わりません。

例えば赤ちゃんが言語を習得することを考えてみましょう。

まずは両親や家族が話す言葉を「聞く」ことから始まります。多くの言葉を聞きとることにより言葉を覚え、「話す」ことができるようになります。

語学学習はまずはひたすら聞き、話すことが大切です。

その後、文字を覚え、書かれた言葉を「読む」ようになります。その後、最終段階の「書く」という手順を踏みます。

ただし、脳科学的には「聞く」「読む」という作業よりは、「話す」「書く」アウトプットをした方が定着しやすく、語学習得には効率的と言われています。

この「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を、手順を意識して学習することが大切です。

3-2.小学校英語

早期に英語教育を始めることには懸念すべき点があります。

それは日本語を使いこなす能力が未発達のうちに英語を学習させることで、日本語を操る力に悪影響を与えるのではないか、ということです。

英語後と日本語のどちらも中途半端な状態になり、思考力にまで影響が及ぶことも指摘されています。

しかし、小学生のうちから英語を学ぶメリットは大きく、現在では必修化され、学習指導要領ののもと、小学5年生からは教科の一つとして本格的に英語を学ぶことになります。

小学校での英語学習は、中学校や高校と比較すればライトなもので、「勉強」というよりも、子どもたちの好奇心を引き出し、楽しく、伸び伸びと学ぶことを中心においています。

そのため、英語を「聞く」「話す」という会話に重きが置かれ、「読む」「書く」はそれほど重視されません。

これは先に述べた語学習得のプロセスにのっとっており、語学学習のスタートとしては理想的と言えるかもしれません。

3-3.英会話教室のデメリット

日本人が義務教育を含め、10年近くも英語を学ぶのに、英語力がないと判断される理由の一つは、外国人とまともに会話できないということです。

そこで保護者様の中にはお子さんを早いうちから英会話教室に通わせたいと考える方も多いと思います。

英語脳を育てるためにも、好奇心が旺盛なうちから、他の人種や文化に触れ、コミュニケーション能力を育むことは大切です。

しかし、ここには大きな落とし穴があります。

それは、小学生で英会話教室に通っていたお子さんは、中学生になってからの英語の学力が伸びず、苦しむお子さんが多いということです。

なぜだと思われますか。

それは、残念ながら英会話教室に通うことで中途半端な英語学習になってしまうことと、小学生英語と中学生英語との間に大きな隔たりがあるためです。

英会話教室で、外国人の教師と会話をすることは楽しく、好奇心も旺盛になり、ある程度の英語が話せるようになります。

保護者様の中にも我が子が、外国人教師と英会話をする姿を見て満足される方もおられるかも知れません。

しかし、この、中途半端に英語が出来る状態が中学生になって英語に苦しむ原因となります。

中学校の英語のテストでは2割がリスニング、8割が筆記となり、ライティングが重要視されます。リスニングやスピーキングが中心だった小学生までの英語と大きく変化します。
また、中学生英語では、これまで重視されなかった文法や語彙力に学習の重きが置かれるようになります。

この変化に生徒本人が気づいてくれればよいのですが、中途半端に英語が出来るお子さんは、1学期のテストは、文法の理解がなくても、それ程苦しまずに高得点が取れてしまいます。

そこで、これまでの学習のように文法に重きを置かず、何となく授業を受けてしまいます。

中学1年生の半ばすぎた頃から、文法の理解なくして正解が出しにくくなってきます。すると、それまで文法をないがしろにしてきた生徒は一気に成績が落ちてしまうことになるのです。

これを防ぐためには、英語に触れる回数を徹底的に増やすことが大切です。週1回の英会話教室に満足するのではなく、教室に通う回数を増やし、ご家庭でも英語に触れる機会を増やすことが大切です。

英語の音楽を聞いたり、アニメやマンガも英語のリスニングには大切です。または英語の本を読んだり、ご家族と英語で会話することはとてもよいと思います。

さらに、中学生になってから、文法の大切さを重々理解させることが大切です。

観光旅行で海外に行ったときに困らない程度の英会話なら文法を重視する必要はそれ程ありませんが、英字新聞や英語論文を読みこなしたり、ビジネスシーンで英語力を活かしたいとなれば、文法の理解はとても大切なことになります。

3-4.向陽塾の小学生英語

向陽塾の小学生英語は、リスニングやスピーキングは学校に任せ、中学生になってから必要とされる文法とリーディング、ライティングに重きを置きます。

日本語とは異なり、主語、動詞、目的語の順に来る英文のつくり方を徹底し、be動詞、一般動詞、疑問詞、助動詞(can)を使った肯定文、否定文、疑問文という中学英語のスタートで求められる文法を徹底します。

その上で、リーディング、ライティングを実施し、学力の定着をはかります。

小学校でかなり優秀な成績のお子さんでも、学校の英語学習だけでは、ほぼ文法を理解できておらず、中学入学後、5月半ばに行われる中間テストまでにこれをマスターさせるのはかなり困難です。

したがって、小学生のうちからある程度の文法理解と、リーディング、ライティングを行っていくことが大切です。

向陽塾の小学生英語は、完全個別で行いますのでお子さんたちの学習到達度にあわせて授業を行います。安心して通っていただくことが出来ます。

 

 

4.日本人の英語力は本当に低いのか

一般に日本人の英語力が低いと言われる理由は、日本人が英語でコミュニケーションを取るのが苦手であるためです。

これは、日本人の特性でもありますが、そもそも日本語でも自分の意見を主張したり、意見を戦わせることが得意でない人の割合が高くなっています。

しかし、日本人は英語の語彙力や文法、長文の処理能力には長けており、英語で書かれた書籍や論文を読みこなすのは得意な場合が多いといえます。

日本は各分野の学問が発達しており、ほぼすべての分野を日本語で学ぶことが出来ることが、英語の必要性を阻んでいるともいえます。

英語力の高い国の中には、母語で学問を修めるのが難しく、学問のためには英語で書かれたテキストを読む必要があり、英語を学ばざるを得ない国も多くあります。

 

 

5.今後の英語教育について

さまざまな分野でグローバル化が進んでおり、英語を使ったコミュニケーション力はますます必要とされています。

AIを利用した翻訳ツールも発達してきていますが、本来の意味でコミュニケーションをとるには、ただ言葉が通じればよいわけではありません。

言語を学ぶには、グローバルな視点を持つことが重要です。
語学を学ぶ中で異国の文化や考え方を理解し、相手を尊重していくことが求められます。

現在の日本の英語教育は変革の過渡期にあります。

小学生の英語が必須化され、中学生の教科書で扱う文章が長文化し、難化しました。入試にコミュニケーション力を求める問題が出題されたり、リスニング力が求められるようになりました。
英語民間試験の活用が増えることで英語4技能が求められるようになりました。
これらは英語力をアップする上で、良い方向に向いているといえます。

しかし、小学英語と中学英語の隔たりが大きく躓く生徒が続出したり、語彙力や文法に重きをおきすぎる中学・高校での授業やテスト、高校入試など、まだまだ問題は多く残されています。

日本では日常生活の中で、英語に触れる機会はほとんどありません。
保護者様の中にも、もう何年も英語から遠ざかっている人も多いのではないでしょうか。

インターネットが普及したことで格段に英語に触れる機会があるにもかかわらず、です。
洋楽を聴いたり、ネイティブな英語を耳に入れることも容易になりました。
また、海外の人ともスマホ1つで簡単につながることも出来ます。

しかし、日本の社会は単一民族で構成されており、なかなか英語が普及していません。
日本人の英語力が低いのは、圧倒的に英語に触れる時間が短いことに原因があります。

公教育における指導要領や教育現場に原因があるのも事実ですが、社会全体で英語に触れる機会が増えなければ、永遠に日本人の英語力は低いままになってしまいます。

現在のような過渡期において、最も被害をこうむるのは生徒たちです。

向陽塾も学校や保護者様と同様、生徒たちの未来を担う一員としての責任を肝に銘じ、日々の授業に取り組んでいきます。